性感染症(STI: Sexually-transmitted Infections)とは、性的接触(オーラル・アナルを含む)を介して感染する可能性がある感染症です。代表的なものには、性器クラミジア感染症、淋菌感染症(淋病)、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭(せんけい)コンジローマ、梅毒があります。

クラミジア感染症

クラミジア・トラコマティスという病原体の感染が原因です。感染者との粘膜接触・分泌物を介しての性行為(オーラル・アナルなどを含む)で感染します。

女性では子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)、男性では尿道炎の原因になりますが、男女とも症状のないことが多く、気づかぬうちに性行為により拡がっているため、感染者数が最も多い性感染症です。なお、クラミジアは子宮頸管・尿道だけでなく、のど(咽頭)や目(結膜)、直腸にも感染します。

女性では、子宮頸管⇒子宮内⇒卵管⇒腹腔内へと感染が拡がることがあり、卵管炎や骨盤腹膜炎を起こすと腹痛が現れます。さらに、炎症により卵管が狭くなったり詰まったりすると、不妊症や子宮外妊娠の原因になることもあります。また、妊娠中の感染は流産・早産の原因になったり、出産時に新生児へ感染して、肺炎・結膜炎を引き起こしたりすることがあります。

【 潜伏期間 】

1~3週間。症状がなければ感染時期は不明です。

【 症状 】

※男女とも症状のないことも多い。

  • 女性
    おりものの増加、不正出血、下腹痛、性交痛、不妊症
  • 男性
    排尿痛 尿道分泌物 尿道違和感(淋菌に比較すると、軽いことが多い)
  • 男女とも共通
    のどの違和感・痛みなど
【 診断 】
  • おりもの・うがい液による、PCR法(核酸増幅法)検査
    ※結果は1週間かかります
    ※淋菌の混合感染も多く、同時検査をおすすめします。
  • 迅速検査(イムノクロマトフィー法による抗原検査)
    当院では、「おりもの」のみ対応可能です。
    ※結果は15分以内に分かります。
【 治療 】

抗菌薬の服用 (単回内服もしくは1週間内服)

※のどの感染では、性器の感染と比べて治りにくく、時間がかかる場合があります。

【 治癒判定 】   

3週間後に治ったかどうかの検査をします。

※核酸増幅法は感度が高く、治療2週間以内の検査では、死菌を検出して陽性となる可能性があります。

治療にあたっては、パートナーも一緒に検査・治療することが重要です。
当院ではパートナーの検査・治療も行っています。 

※医師から指示があるまで、性行為は控えましょう。

淋菌感染症(淋病)

 淋菌の感染が原因です。感染者との粘膜接触・分泌物を介しての性行為(オーラル・アナルなどを含む)で感染します。

女性では子宮頸管炎、男性では尿道炎の原因になります。男性は激しい排尿痛や尿道分泌物(膿)で感染に気づくことが多いのですが、女性の40%は自覚症状を伴わないとされています。子宮頸管・尿道だけでなく、のど(咽頭)や目(結膜)、直腸にも感染します。

女性では、子宮頸管⇒子宮内⇒卵管⇒腹腔内へと感染が拡がることがあり、卵管炎や骨盤腹膜炎を起こすと卵管が狭くなったり詰まったりするため、不妊症や子宮外妊娠の原因になることがあります。また、また、妊娠中に感染していると、出産時に新生児へ感染して結膜炎を引き起こすことがあります。

【 潜伏期間 】

2~7日。症状がなければ感染時期は不明

【 症状 】
  • 女性
    おりものの増加、不正出血、下腹痛、性交痛、下腹痛、不妊症など
    ※女性は自覚症状を伴わない場合も多いです。
  • 男性
    排尿痛 尿道分泌物 尿道違和感
    ※クラミジアと比べて症状が強いですが、症状が軽かったり症状がなかったりすることもあります。
  • 男女とも
    のどの違和感・痛みなど
【 診断 】

おりもの・うがい液による PCR法(核酸増幅法)検査

※結果は1週間かかります。

※クラミジアとの混合感染も多く、同時検査をおすすめします。

【 治療 】

抗菌薬(単回の点滴、30分程かかります) 

※内服抗菌薬の効かない淋菌(耐性淋菌)が増加しています。

※のどの感染では性器の感染と比べて治りにくく、時間がかかる場合があります。

【 治癒判定 】   

3週間後に治ったかどうかの検査があります。

※核酸増幅法は感度が高いため、治療2週間以内の検査では死菌を検出してしまい、陽性となる可能性があります。

治療にあたってはパートナーも一緒に検査・治療することが重要です。
当院ではパートナーの検査・治療も行っています。 

※医師から指示があるまで、性行為は控えましょう。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスの感染が原因です。感染者との性行為で感染します。性器や肛門周辺に小さな水ぶくれ(水疱)ができ、痛みやかゆみ、不快感を伴います。水疱が破れると、粘膜がただれる「潰瘍」となり、排尿時などに強い痛みや発熱、そけい部(足のつけ根)のリンパ節の腫れ・痛みを伴うことがあります。

口の周りにできる「口唇ヘルペス」と同じウイルスであり、キス(口唇⇒口唇)のほかオーラルセックス(口唇⇒性器、性器⇒口唇)・アナルセックスでも感染します。

初めて感染した時には感染から2~10日後に症状が現れ、2~3週間で自然に治りますが、抗ウイルス薬で治療することで症状が緩和し、治癒までの期間が短縮できます。

しかし、初めての感染でも症状が出ないことがあり (不顕性感染)、腟内や直腸内の病変は自分からは見えないため、自分が単純ヘルペスウイルスに感染していることに気づかないケースもあります。

単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると症状が治った後もずっと神経に潜伏します (潜伏感染)。普段は免疫力によって活動が抑え込まれていますが、免疫力が弱くなるとウイルスが再活性化するため、ストレスや疲れ、風邪、月経時などに再発することがあります。ただし、再発時は軽い症状で済むことが多く、何らかの症状が出ていても半数の人は再発に気づかないと言われており、自覚症状がなくても人にうつす可能性があります。 再発頻度は年に数回~月に数回まで、ばらつきがあります。

【 潜伏期間 】

2~10日 

※初めての感染が不顕性感染で、神経に潜伏していたウイルスで症状が初めて出た場合には感染時期は不明となります。

【 症状 】

性器・肛門周辺に水疱(水ぶくれ)・潰瘍(かいよう)、痛みによる排尿・歩行困難、発熱、そけい部(足のつけね)の腫れ、痛みなど

※再発時は軽い症状で済むことが多い。

※腟内や直腸内の病変は、気づかないことが多い。

【 診断 】
  • 視診
    特徴的な肉眼所見の確認
  • 抗原検査(イムノクロマトフィー法による) 
    症状の似た病気との鑑別のため、患部をこすって検査します。
  • 迅速検査
    15分以内に結果が出ます。
    ただし、小さな病変や時間の経過した病変の場合では「陰性」となることがあります

※パートナーに関しては、症状がなければ診断はできません。

※パートナーの7割は無症状または症状に気づいていないとされています。ただし、無症状でもヘルペスウイルスを排泄している可能性が高いため、コンドームの使用が推奨されます。

※パートナーもヘルペスの症状があれば 検査・治療可能です。

当院ではパートナーの検査・治療も行っています

【 治療 】
  • 抗ヘルペスウイルス薬の投与
    アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル 内服5日間
    抗ヘルペスウイルス薬はウイルスの増殖中に対し効果があります。症状が出たら、できるだけ早く使うことが重要で、症状が和らいで治るまでの期間が短縮できます。ただし、軟膏だけでは、治るまでの期間を短縮させることはできません。
    なお、無症状のときに神経に潜伏しているウイルスを消失させる薬は、まだありません。
    性器ヘルペスの再発を完全に防ぐことは難しいのですが、再発の頻度が多い方には、PIT療法や再発抑制療法といった選択肢があります。
    ※初発(初めての感染)重症例は内服薬を変更し、5日間追加することがあります。
    ※軟膏やクリームを併用することがありますが、ウイルスの排泄を抑制できなく、治癒までの期間を短縮させることは難しいとされています。
    ※脳炎や髄膜炎を合併するなど重症の場合には高次医療施設をご紹介し、点滴などの治療を行うことがあります。
  • PIT療法(Patient Initiated Therapy)
    あらかじめ抗ヘルペスウイルス薬を処方しておき、水疱(水ぶくれ)ができる前の初期症状(ピリピリ、チクチクするような違和感)が出たときに、患者さん自身の判断ですぐに薬を服用する治療法です。すぐに内服することでウイルスの増殖を抑えられるため、再発を防いだり、再発しても治るまでの期間を短くしたりすることができます。PIT療法は性器ヘルペスだけでなく、口唇ヘルペスの再発に悩む方も行うことができます。
  • 再発抑制療法(性器ヘルペスのみ
    性器ヘルペスの再発を年6回以上繰り返す場合や再発時の症状が重い場合には、バラシクロビルを1日1回、1年内服する再発抑制療法が有効です。保険適用があります。
【 妊娠・出産への影響 】

妊娠期間中の初感染や再発によって、子宮内の赤ちゃんに感染することはほとんどありません。しかし、分娩1か月前の初感染や分娩時に症状が現れている場合には、経腟分娩で赤ちゃんに感染することがあります。出産時の赤ちゃんへの感染では重症になることがあるため、経腟分娩ではなく帝王切開が選択される場合もあります。妊娠後期のセックスやオーラルセックスは避けるようにしましょう。

尖圭コンジローマ(尖圭コンジーム)

6型または11型ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。感染者との粘膜接触、性行為(オーラル・アナルなどを含む)で感染し、外陰部や肛門など性器周辺に鶏のトサカのようなイボが複数できます。自然に治ることもありますが、再発しやすい特徴があります。

妊娠中に発症すると、分娩の際に赤ちゃんにもうつることがあります。

【 原因 】

低リスク型HPV(6型・11型)の感染が9割を占めます。

※発がん性のあるHPV高リスク型とは型が異なりますが、同時に感染していることもあります。

【 症状 】

イボ以外の自覚症状はないことが多いです。イボの場所や大きさによっては、痛み・かゆみを伴います。淡紅色~褐色のニワトリのトサカまたはカリフラワーのような乳頭状のイボとなり、大きさは数mmで、時に巨大化します。

女性では大陰唇・小陰唇・腟前庭・腟・子宮頸部、男性では亀頭・冠状溝・陰嚢と、男女とも尿道口周囲・肛門周囲・肛門内にできることが多いです。

【 診断 】

特徴的なイボの視診を行います。

ただし、他のイボの原因となる病気と区別が難しい場合には、皮膚組織の採取による病理検査を実施することがあります。

※パートナーに関して、症状がなければ診断することができません。

※パートナーも症状があれば 検査・治療可能です。

当院ではパートナーの検査・治療も行っています

【 治療 】 

大きさ、数、場所、患者さんの希望により、治療法を決定します。

単独の治療法では治癒率が6~9割、再発率が3割程度あるため、複数の治療法を繰り返さなければならない場合があります。また、視診上治ったように見えても、3か月以内に2~3割は再発するため、3か月間はフォローが必要です。

  • イミキモド5%クリーム
    週3回、就寝前に塗布し、起床後に洗い流します。
    イボの大きさによりますが、平均治癒期間は8週間と根気が必要です。イボが小さければ、2~4週間で治ることもあります。16週間で治らない場合や、早く治したい場合は他の治療法を行います。
  • 冷凍療法
    液体窒素療綿棒をイボに数秒押しあてて、イボを凍結させることを何度か繰り返します。ピリピリとした痛みはありますが、局所麻酔は不要です。1~2週ごと行います。治療には数週間かかります。大きなイボには適していません。
  • 外科的治療
    電気メスによる焼灼やレーザーによる蒸散があります。他院をご紹介しています。
【 妊娠・出産への影響 】

 尖圭コンジローマの病変のある母体から経腟分娩で生まれた子供には、「再発性気道乳頭腫症(のどの良性腫瘍)」を発症するリスクが1~3%あるという報告や、尖圭コンジローマの既往のある妊婦から生まれた子供でも発症リスクが0.7%あるという報告があります。分娩様式(経腟分娩/帝王切開)や分娩前の治療に関しては施設によって異なりますが、経腟分娩を行う場合には、可能な限り、腟内病変を減らした上で出産することが望ましいとされています。妊娠中の治療では、イミキモドクリームと比べて「外科的治療」が優先されます。

【 HPVワクチン 】

4価HPVワクチン(ガーダシル)、9価HPVワクチン(シルガード9)は、高リスク型HPVの感染が関係している「子宮頸がん」や「子宮頸がんの前がん病変」のほかに、低リスク型HPV(6型・11型)の感染を防ぐため、尖圭コンジローマの発症を予防することができます。以前に尖圭コンジローマになった人でも、ワクチンで将来のコンジローマを予防することができる可能性があるとされています。

梅毒

近年、感染者が急増している性感染症です。梅毒感染者の感染部位との接触で、粘膜や皮膚の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入して感染します。性交(性器⇒性器)のほか、キス(口唇⇔口唇)、オーラルセックス(口唇⇔性器)・アナルセックス(性器⇔肛門・直腸)で感染します。感染力が強く、感染に気づかずに診断・治療が行われないと、数年から数十年で心臓・血管・脳などの臓器に病変が生じます。昔は感染したら死に至ることのある病気でしたが、1940年代のペニシリン(抗生物質)の発見により、早期診断・早期治療をすれば治癒可能です。ただし、治っても何度でも感染する可能性があるので、感染予防が必要です。  

【 潜伏期間 】

10日~3か月  

【 病期と症状 】

感染からの期間により、早期梅毒(第1期・第2期)後期梅毒(第3期)に分かれます。 

なお、無症状でも実際は進行しています。一時的に症状がなくなっても、治ったと思わずに診断・治療することが大切です。

1.早期梅毒

感染から1年未満。感染力が強い(性行為または母子感染)。

  • 早期梅毒第1期……感染から1週間~3か月
    梅毒一次病変

    唇や口の中、のどの粘膜、陰部・肛門の粘膜や皮膚、直腸粘膜など、トレポネーマが侵入・感染した場所に しこり・びらん・潰瘍などができます。痛みはないことが多いが、痛む場合もあります。そけい部(太ももの付け根)や首のリンパ節が腫れることもあります。自覚症状がなければ、気づかないことも多いです。
    梅毒一次病変は、治療をしなくても数週間で症状が自然になくなりますが、その後、再び4~10週間の潜伏期間に入ります。ただし、体内に病原体は残っており、他の人に感染させることもあります。
    潜伏梅毒・無症候性梅毒
    自覚症状・他覚症状はありませんが、治療は必要です。
  • 早期梅毒第2期……感染から1か月~1年
    梅毒二次病変

    トレポネーマが血液やリンパを介して全身に拡がり、皮膚などあらゆる臓器で病変が形成されます。バラ疹(しん)や丘疹など、他の皮膚疾患と紛らわしい発疹が現れるため、アレルギー疾患・他の皮膚疾患に間違えられることがあります。唇や口の中にも炎症が広がったり、脱毛が生じたりすることがあります。
    ※バラ疹

    小さなバラの花に似た赤い発疹が手のひら、足の裏、体全体にうっすらと現れる。発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合があり、再発を繰り返すことがあります。
    ⇒ 梅毒二次病変
    も、治療をしなくても数週間~数か月で症状が消えますが、体内に病原体は残っており、他の人に感染させることもあります。 
    ⇒ 潜伏梅毒 無症候性梅毒
    :自覚症状・他覚症状はないが治療が必要です。
2.後期梅毒

感染から1年以上経過。感染力はないとされています。

  • 第3期梅毒
    早期梅毒の時期に治療が行われなかった場合。現在の日本では、まれです。
    皮膚・筋肉・骨・内臓などに硬いしこり、ゴムのようなできもの(ゴム腫)が生じます。
    心臓・血管・脳など複数の臓器に病変が生じると、死に至ることがあります。
【 検査 】
病変の診察
梅毒抗体検査(血液検査)

当院では即日検査は行っていません。結果まで4日~1週間かかります。

以下の2つの抗体から診断を行います。

  • 梅毒トレポネーマ(TP)抗体
    梅毒にかかったことがあるかどうかの指標
  • 梅毒脂質抗体(RPR)抗体
    梅毒の活動性の指標
TP抗体 RPR抗体 活動性梅毒*1 陳旧性梅毒*2 梅毒ではない
○ ごく初期
+ ○ ごく初期 まれ
+ 極めてまれ
+ + まれ
(表) 梅毒抗体検査の解釈

*1活動性梅毒 : 治療を必要とする梅毒

*2陳旧性梅毒 : 治った状態で治療の必要のない梅毒

※いずれかの抗体が陽性の場合は、自動化定量法による追加検査を行います。

梅毒抗体検査は 最終の感染機会から1か月以上で検査可能となるため、感染直後の梅毒のごく初期や、第1期梅毒で症状があっても血液検査で陽性にならないことがあります。(血液学的潜伏期:ウインドウ期といいます。) 

梅毒を疑う病変や症状がある場合抗体検査陰性であってもウインドウ期の可能性も考えて1か月後に再検査をすることが望ましいです。

梅毒のウインドウ期は最大3か月のため、最終の感染機会から3か月後に抗体陰性を確認するまでは感染の否定はできないとされています。

無症状でも活動性梅毒の方との性的接触があった場合、抗体検査陰性であっても最終の感染機会から3か月後までの抗体検査が望ましいです。

【 治療 】

抗菌薬のペニシリン製剤が第1選択となります。

早期梅毒では、4週間の内服治療か1回のみの筋肉注射を選択します。

  • サワシリン(アモキシシリン)
    1回 500mg、1 日 3 回 28 日間 経口投与
  • ステルイズ(ベンジルペニシリンベンザチン水和物水性懸濁筋注) 
    240 万単位 1回のみ筋肉注射

※治療開始直後、一時的に発熱や頭痛が起こることがあります。梅毒トレポネーマが体内で大量に死ぬことによって起こる「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」と呼ばれ、24 時間以内に収まります。解熱鎮痛薬などで対応して、内服治療を中断しないようにしましょう。

※ペニシリン製剤では、治療開始の 1週目あたりから薬疹が現れることがあります。

<ペニシリンアレルギーのある場合>  
  • ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩)
    1 回 100mg、1 日 2 回、28 日間、経口投与
    ただし、妊婦には使用できないため、他の薬剤を使用します。

※医師から指示があるまで、性行為は控えましょう

【 パートナーの検査 】 

※当院では、パートナーの検査・治療も行っています

パートナーや感染の可能性のある方でも梅毒抗体検査を行い、必要に応じて一緒に治療することが大切です。 最終の感染機会から3か月後に抗体検査が陽性となっていないことを確認するまでは、感染は否定できません。

【 治療後のフォロー 】

※梅毒脂質抗体(RPR)抗体(自動化定量法)の値が、治療開始前の2分の1以下になれば治癒と判定します。効果不十分と判断される場合は、治療期間の延長を検討します。治癒後も間隔を空けながら、1年間は定期的な抗体検査を行います。

※梅毒トレポネーマ(TP)抗体に関しては、梅毒が治癒しても陽性は続きます。

※梅毒の感染によりできた抗体は、梅毒が治っても再感染を防ぐことができません。

適切な予防(コンドームの使用、パートナーの治療など)ができていなければ、梅毒に再び感染する可能性があります。

【 妊娠・出産への影響 】

女性では20代の発症が特に多いです。妊娠中の感染は胎盤を通じての「胎児感染」により、死産や早産となったり、生まれた子どもの神経・骨などに異常が起こったりすることがあります。先天梅毒(梅毒母体から出生した児)も近年、急増しています。

HIV感染症

Human Immunodeficiency Virus(HIV:ヒト免疫不全ウイルス)による感染症。

HIV感染者が、免疫力の低下により様々な合併症を起こすようになった状態のことをエイズ「AIDS( Acquired Immuno-Deficiency Syndrome /後天性免疫不全症候群)」と呼びます。初めて発見された1981年頃は、効果的な治療法がなく、多くの患者が亡くなりました。

現在では、エイズ発症前に感染を発見できれば、抗HIV薬の投与によって、ほぼ確実にエイズ発症を予防できるようになってきています。

【 感染経路 】

血液、精液、膣分泌液、母乳が感染源となります。

  1. 性行為による感染 (オーラル・アナルを含む)
    HIVを含んだ体液が、性器、口、肛門、直腸の粘膜や傷口から侵入して感染します。
    ※直腸粘膜は腟や口の粘膜より傷つきやすいため、肛門性交はHIVに感染しやすくなります。※他の性感染症(梅毒・淋病・クラミジアなど)に感染していると、HIVに感染しやすくなります。
  2. 母子感染
    HIVに感染した妊婦からの胎内感染・産道感染・母乳感染が原因です。
  3. 血液感染
    依存性薬物(覚せい剤など)の注射器の共用(回し打ち)、医療現場での針刺し事故などにより感染の可能性があります。日本で献血による血液安全性が確保されていますが、輸血用血液からの感染の可能性はゼロではありません。血液凝固製剤には加熱処理が行われているため現在は感染することはありません。
【 症状 】

HIVに感染すると、急性感染期⇒無症候期⇒AIDS(エイズ)期の3段階の経過をたどります。しかし、経過の進み方(期間)には個人差があり、感染後から短期間でエイズを発症することもあります。

  1. 急性感染期……感染から2週間~6週間
    体内でウイルスが増殖して、5割~9割の人にインフルエンザ同様の症状がみられます。発熱、リンパ節の腫れ、喉の痛み、筋肉痛、頭痛、倦怠感(だるい感じ)などが数日から数週間続いて、自然に治ります。 
  2. 無症候期……無症状で数年~10年以上経過
    体内ではウイルス増殖が続いて、次第に免疫力が低下していきます
  3. AIDS(エイズ)期……感染から数年~数十年 
    免疫力が低下し、健常者が日常では感染しないような弱い病原菌にも負ける「日和見感染(ひよりみかんせん)」を起こすようになります。エイズを発症してから、初めて「HIV感染」が分かる人も少なくありません。
【 スクリーニング検査 (血液検査) 】

HIV抗原抗体同時スクリーニング検査を行います。

なお、当院では即日検査は行っておらず、結果まで4日~1週間かかります。

※スクリーニング検査には偽陽性があり、実際の感染は陽性のうち「数%」とされます。

※感染初期には検査で陰性となり感染していることが、検査では分からない時期(ウインドウ期/感染から約13日~42日)があります。

スクリーニング検査結果が「陰性」の場合、検査で陽性になる期間には個人差があり、感染していないことを確定するには、3か月後以降に再検査をおすすめしています。

スクリーニング検査が「陽性」または「判定保留」の場合は、追加検査(確認試験)が必要となります。確認試験の結果は1週間ほどかかります。

※スクリーニング検査および確認試験陽性の場合には、HIV拠点病院をご紹介します。

当院での性感染症検査にかかる費用

身体に何らかの異常・症状があり、医師による問診、診察の中で検査や病気の治療が必要と判断された場合には、「保険診療」として健康保険を適用した検査・治療が受けられます。

また、自覚症状がない場合や保険診療を希望しない場合は「自費診療」となります。

自費(円) 保険3割負担(円)
初診料 2,910 870
再診料 1,280 380

おりもの検査(帯下・子宮頸管)

自費(円) 保険3割負担(円)
細菌培養(細菌・カンジダ・トリコモナス) 3,400 1,020
腟分泌物鏡検(カンジダ・トリコモナス) 2,170 650
グラム染色(細菌性腟症) 2,170 650
淋菌・クラミジア 4,520 1,360
淋菌のみ 3,880 1,160
クラミジアのみ 3,780 1,130
マイコプラズマ・トリコモナス 5,400 1,620
マイコプラズマ・ウレアプラズマ 7,700 自費のみ
クラミジア迅速検査 2,960 890

のどの検査(咽頭うがい液)

自費(円) 保険3割負担(円)
淋菌・クラミジア 4,120 1,240
淋菌のみ 3,480 1,040
クラミジアのみ 3,380 1,010

血液検査

自費(円) 保険3割負担(円)
梅毒定性 2,310 690
梅毒定量 2,710 810
HIVスクリーニング検査 2,390 自費のみ
B型肝炎(HBs抗原) 2,130 自費のみ
C型肝炎(HCV抗体) 2,860 自費のみ

性感染症の予防法

  1. コンドームの正しい使用
    性行為(オーラル・アナルを含む)の初めから終わりまで、必ずコンドームを着用することで精液・腟分泌液・血液と粘膜の接触を防ぎ、性感染症のリスクを大きく減らすことが可能です。 
    ただし、コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染する可能性があるため、コンドームを使用しても100%予防できるとは思わずに、自分や相手の皮膚や粘膜に異常があった場合は性的な接触を控えましょう。
  2. 不特定多数との性行為を避ける
    不特定多数との性行為では、感染リスクを増やすだけでなく、気づかぬうちに感染している場、合新たに感染者を増やすことにもなります。