ダニ媒介性脳炎ワクチンについて

 山菜取り、魚釣り、キャンプなどのレクレーションや、林業・農作業などの野外活動では、マダニに咬まれるリスクがありますが、ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニに咬まれるれることにより、ダニ媒介性脳炎を発症することがあります。

 ウイルスのタイプにより症状や経過が異なります。日本では北海道で「極東亜型ウイルス」の分布が報告されており、感染すると徐々に頭痛、発熱、悪心、嘔吐等の髄膜炎症状が現れ、脳脊髄炎などを発症すると、精神錯乱、昏睡、痙攣、麻痺等の中枢神経症状を呈します。「極東亜型」の致死率は20%以上で、生存者の30%~40%に神経学的後遺症がみられるなど、最も重篤な経過をたどると報告されています。

 ヨーロッパや東アジアで毎年1万件以上の発生報告がありますが、日本では2018年に発生した国内5例目以降の報告はありませんでした。しかし、2024年に札幌市で6例目、函館市で7例目の発生報告があり、これまで国内で報告された7例はすべて北海道で発生しています。

 原因不明の中枢神経系疾患患者の血液を調べた報告では、東京や岡山県、大分県でウイルス抗体陽性例があり、栃木県、島根県、長崎県等などでウイルス抗体を保有する動物が確認されていることから、ウイルスは国内に広く分布していると考えられています。

 ダニ媒介性脳炎は、その認知度の低さや検査体制不備などから、脳炎などを発症しても診断されていない可能性があり、日本のダニ媒介性脳炎の実態は十分に把握されていません。

 マダニに咬まれない対策として、野外では腕・足・首など肌の露出を少なくする。野外から戻ったら屋内にマダニを持ち込まない対策をするなどがありますが、ダニ媒介性脳炎予防のためのワクチン接種を受けるのも選択肢の一つです。

 ダニ媒介性脳炎ワクチンは1970年代からヨーロッパを中心に広く使用されており、日本では「タイコバック」が2024年に厚生労働省に承認され、2024年9月に発売になりました。接種によりダニ媒介性脳炎ウイルスに感染する可能性のある地域の居住者や、ダニ媒介性脳炎の流行地域への渡航者の感染を予防することが期待されます。

 小児用ワクチンは1~15歳まで接種できますが、当院では12歳以上の方のみとしています
 16歳以上は成人用ワクチンになります。

【 接種スケジュール 】
※初回免疫(3回)
 通常接種 
  1回目接種 1~3か月後に2回目接種
  2回目接種 5~12が月後に3回目接種
 迅速接種
  1回目接種 2週間後に2回目接種
  2回目接種 5~12が月後に3回目接種
※追加免疫
 3回目接種の3年後に追加接種 
  以後59歳までは5年ごと、60歳以上では3年ごと

【 料金(税込) 】1回につき13,200円