特定の季節や場所に行ったり食べたりした後に、目・皮膚のかゆみ、くしゃみ、サラサラな鼻水、じんましん、喉の違和感、咳などの症状が出ることはありませんか?
それらの症状は、もしかしたら「アレルギー」が原因かもしれません。
厚生労働省によると、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)、薬剤・昆虫アレルギーなど、何らかのアレルギー疾患を持っている方は、今や日本国民の約2人に1人にも上ると報告されており、患者数は年々増加傾向にあります。
当院ではアレルギー検査のひとつとして、少量の採血でアレルギーの原因物質をスクリーニング(ふるい分け)できる「Viewアレルギー39」検査を行っています。
この検査では、ダニ(ハウスダスト)、花粉、イヌ・ネコの皮屑などの吸入系から卵・小麦といった食物系まで、計39項目のアレルギー原因物質に対するアレルギー反応を確認できます。
アレルギー症状の原因となっているアレルギーを知ることで、原因物質の回避や治療といった対策が取れるようになるため、症状軽減に繋がります。
既に症状が現れている方では、健康保険を適用して検査することが可能です。
また、アレルギー治療には、妊娠予定・妊娠中・授乳中の方でも使用できるお薬を処方しております。
「Viewアレルギー39」検査にご興味ある方は、当院までお気軽にご相談ください。
アレルギー度セルフチェック
次のような症状は、ありませんか?
以下の症状に思い当たる場合には、アレルギーの可能性があります。
- 決まった季節に、目のかゆみ・充血・くしゃみ・鼻水が出る
- 掃除・衣替え、ほこりっぽい場所に行くなどすると、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水が出る
- 肌が乾燥しやすい
- 少しの刺激で、湿疹や肌荒れが起こりやすい
- ひじ・ひざの裏など、関節部分に湿疹が出やすい
- 特定の食べ物を食べた後、腹痛や蕁麻疹(じんましん)が出る
- 果物・野菜を食べると、口の中・喉がイガイガ・ピリピリする
- 犬・猫などペットを飼っている家に行くと、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水が出る
- 息苦しいときがある(ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸になる)
- 咳が8週間以上続いている
- 家族にアレルギーを持った人がいる
アレルギーとは?
私たちの身体には、身体の成分とは違う成分(異物)が入ってくると排除する働き「免疫」が備わっています。
免疫による防御システムが過剰反応して、身体に不利益な症状が現れるようになることを「アレルギー(反応)」と呼びます。
感作(かんさ)とアレルギー反応
体内にウイルス・細菌などの異物が侵入すると、免疫は身体から排除するために「抗体」を作ります。
しかし、本来であれば積極的に排除する必要がない「花粉・ハウスダスト(ダニ)」や、むしろ取り込むべき「食べ物」などに対しても「抗体(IgE抗体)」を作ってしまうことがあります。
作られた「IgE抗体」は、アレルギー反応を起こすマスト細胞(肥満細胞)の表面にくっついて、再びアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が入ってくるのを待つようになります(=感作)。
ただし、「感作=アレルギーの発症」ではなく、アレルギー発症の一歩手前となります。
また、何のアレルゲンで感作されるかは、体質など人によって異なり、さらに感作が成立しても、抗体の蓄積が一定量(個人差あり)に達するまでは、特に症状は現れません。
抗体の蓄積が一定量をオーバーすると、次にアレルゲンが体内に入ってきたときにマスト細胞で待機している抗体と結びついて「アレルギー反応(抗原抗体反応)」を起こします。その刺激によって、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、くしゃみ・鼻水・じんましんといったアレルギー症状を誘発します。
この反応を「即時型アレルギー反応」と呼び、多くのアレルギー反応はこの仕組みで発症しています。
アレルギーの症状
症状の程度には個人差があり、多くの方でアレルギー反応が出ても軽症ですが、稀に「アナフィラキシー反応」として、命に関わるようなショック症状を起こすことがあります。
「たかがアレルギー」と侮らず、注意が必要です。
また、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などは、アレルギーが原因となって引き起こされている病気のことです。
アレルギーによって引き起こされる主な症状と代表的な病名は、次の通りです。
- 目の症状……アレルギー性結膜炎、食物アレルギー
目のかゆみ、目の充血、涙目、まぶたの腫れ - 鼻の症状……アレルギー性鼻炎(花粉症)
くしゃみ、鼻水、鼻づまり - 口の症状……口腔アレルギー症候群、食物アレルギー
口の中の違和感、唇の腫れ - 呼吸器症状……気管支喘息
喘息、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸音)、声がかすれる、咳が出る、息がしにくい - 皮膚症状……アトピー性皮膚炎、食物アレルギー
赤くなる、かゆみ、じんましん(小さく赤い発疹がたくさん現れる) - 消化器症状……食物アレルギー
腹痛、吐き気、嘔吐、下痢 - ショック症状
ぐったりする、意識がなくなる、唇・爪が青白くなる
アレルギーの原因
アレルギー発症の直接原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」と呼びます。
アレルゲン(抗原)には様々ありますが、ダニ(ハウスダスト)・カビ・花粉・食べ物(牛乳・卵・小麦・落花生など)が有名です。
アレルゲンの他にも、遺伝因子や環境因子などが複雑に絡むことによって発症します。
遺伝因子
アレルギー体質(素因)が家族間で遺伝すると考えられます。
環境因子
次のような外的要因がアレルギーの発生リスクを高めます。
- アレルゲンへの頻回の暴露
- ストレス
- 生活習慣
- 食事
- 汚染物質
タバコの煙、排気ガスなど
「Viewアレルギー39検査」とは?
「Viewアレルギー39検査」とは、1回の少ない採血で血液中に含まれる39項目のアレルゲン(アレルギー原因物質)に対する「特異的IgE抗体」の値を調べることで、スクリーニング(ふるい分け)できる検査です。結果は、約1週間後に分かります。
なお、詳細な検査や治療が必要な場合には、アレルギー専門医へ受診することをおすすめします。
Viewアレルギー39検査をおすすめしたい人
Viewアレルギー39検査は、問診や症状からアレルギーが疑われるのにアレルゲンの推定が難しい方、アトピー性皮膚炎、花粉・食物アレルギー(PFS)*1などが疑われる方に有用な検査です。
*1 花粉関連食物アレルギー症候群:花粉症患者が野菜や果物を生で食べた時に、唇・喉・口にかゆみ・腫れ・イガイガ感などのアレルギー症状が引き起こされる病気。「口腔アレルギー症候群」とも呼ばれる。
- 幼児・学童期以降、アトピー性皮膚炎がある
- 複数のアレルギー疾患(アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)を持っている
- アレルギー性鼻炎で、花粉・食物アレルギー症候群(PFS)*1を合併している
「Viewアレルギー39」で検査可能なアレルゲン
アレルゲンは、吸うことでアレルギー症状が出るタイプの「吸入系アレルゲン」と、食べることでアレルギー症状が出やすいタイプの「食物系アレルゲン」に分けられます。
「Viewアレルギー39」の検査では、以下の決められた39項目の抗原に対して、検査可能です。
吸入系、その他のアレルゲン
- 室内塵(ちり)
ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト - 動物
イヌ皮屑(フケ・垢)、ネコ皮屑 - 昆虫
ガ、ゴキブリ - 樹木
スギ、ヒノキ、ハンノキ(属)、シラカンバ(属) - 草木類
カモガヤ、オオアワガエリ、ブタクサ、ヨモギ - 空中真菌(カビ)
アルテルナリア(ススカビ)、アスペルギルス(コウジカビ) - 真菌その他
カンジダ、マラセチア(属)、ラテックス(天然ゴムに含まれるたんぱく質)
食物系
- 卵
卵白、オボムコイド(卵白の中にあるタンパク質のひとつ) - 牛乳
- 小麦
- 豆・穀物・種実類
落花生(ピーナッツ)、大豆、ソバ、ゴマ、米 - 甲殻類
エビ、カニ - 果実
キウイ、リンゴ、バナナ、 - 魚・肉類
マグロ、サケ、サバ、牛肉、豚肉、鶏肉
「Viewアレルギー39」検査によるアレルギーの診断
Viewアレルギー39検査では、index値からクラス0~6に分類されます。
判定の目安としては、クラス0~2までは「症状が強く出ていなければ様子見」、クラス3以上は、現れている症状と照らし合わせて、原因の除去・治療といった対策を取ることをおすすめします。
また、クラスが上がるにつれて、アレルギー発症リスクが高まったり、症状が重くなったりすることがある一方で、症状が出ていなくても、特異的IgE抗体が検出される場合があります。
なお、Viewアレルギー39検査は、あくまでもスクリーニング検査(ふるい分け検査)となるので、食物系アレルゲンについては「補助診断」となり、「陽性=食べてはいけない食物(強制除去)」ではありませんので、ご注意ください。
クラス | Index値 | 判定 |
---|---|---|
0 | 0.27未満 | 陰性 |
1 | 0.27~0.50未満スト | 擬陽性 |
2 | 0.50~1.80未満 | 陽性 |
3 | 1.80~7.05未満 | |
4 | 7.05~17.35未満 | |
5 | 17.35~29.31未満 | |
6 | 29.31~ |
「Viewアレルギー39」検査の費用
「アレルギー症状があり、問診などから原因が特定できない場合」には、健康保険を適用してViewアレルギー39検査を受けることが可能です。
- 下記費用に初診料などが別途必要となります。
保険適用での費用は次の通りです。
- 3割負担 4,830円
- 2割負担 3,220円
- 1割負担 1,610円
また、決められた39種類以外にも検査したいアレルゲンがある場合、1項目追加につき「プラス1,100円」で追加検査可能です。追加可能な項目につきましては、クリニックまでお問い合わせください。
アレルギーの治療・予防
妊娠中はホルモンバランスの変化によって、アレルギー症状が妊娠前と比べて悪化しやすくなります。当院では、主に花粉症によるアレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎などに対し、妊娠週数に合わせた治療を行います。
アレルゲンの除去・回避
アレルギー性疾患の治療の基本となります。
アレルギー症状を出さないためには、原因となるアレルゲンを回避したり除去したりすることが最重要です。
主なアレルゲン回避方法は、以下の通りです。
- ハウスダスト・ダニ対策
- 小まめに換気して、水拭き中心の掃除を行う
- カーペットや布ソファーの使用を避ける(ダニの温床を避ける)
- ペット(特にネコ)とは一緒に寝ない
- ペットのブラッシングを行うときは、マスク着用
- 花粉症対策
- 花粉の飛散が多い日(風が強い日・晴れた日中など)の外出を避ける
- 花粉対策メガネ・マスクを着用する
- 洗濯物の外干しを控える
- 髪や洋服に付いた花粉を払い落としてから、家に入る
- 帰宅後すぐに洗顔やうがいをする
- 禁煙
喫煙は、鼻の粘膜が炎症を起こす原因となるため、アレルギーを発症しやすくなります。 - 規則正しい生活
ストレスや不規則な生活は、アレルギー症状の悪化に繋がります。
症状軽減のため、規則正しい生活習慣を心がけ、疲労・ストレスは溜めないようにしましょう。
特に、妊娠初期(妊娠15週/4か月まで)は、赤ちゃんの身体の器官が形成される大切な時期です。基本的には生活習慣の見直しを行い、お薬は使わないでできる「温熱療法」「蒸しタオル」「入浴」といった対症療法もおすすめです。
薬物療法
お薬で症状の軽減を図る「対症療法」を行います。
薬物療法では、「日常生活に支障がないレベルまで症状を抑えること」を目的としており、症状の出方には個人差があるため、患者さんに合わせて処方します。
当院では、妊娠予定・妊娠中・授乳中でも使えるお薬を処方しており、主に次のようなお薬で治療を進めていきます。
これらのお薬を使用しても、症状の改善がみられない場合には、耳鼻科や眼科の受診をおすすめしています。
内服薬(抗ヒスタミン薬)
神経伝達物質ヒスタミンの働きを抑えることで、アレルギー反応を起こりづらくします。
点鼻液(鼻噴霧式ステロイド)
鼻の粘膜からのアレルギー反応に対して、高い抗炎症効果が期待できます。局所に直接作用するため、内服薬では効きづらい「鼻づまり」にも効果的です。内服ステロイドと比べて身体への負担が少なく、全身的な副作用はほとんどありません。
点眼液(抗ヒスタミン薬)
抗炎症成分を配合しているので、アレルギーによる目のかゆみ・異物感、かすみ目に効果的です。効き始めるまでに、1~2週間かかります。
上記のアレルギー治療薬は、『産婦人科診療ガイドライン 産科編2023』の中で「妊娠予定や妊娠中、胎児・新生児に対して注意が必要な医薬品」とは明記されておらず、問題なく使用できると考えられています。
また、授乳に関しては、現時点で添付文書上「授乳を避けることが望ましい」とされているものがあります。しかし、今後「アレルギーの治療が望ましい場合には、授乳を中止せずに継続しても問題ない」といった内容の添付文書に順次改定されていく予定となっています。